数寄屋の粋を学ぶ。JAFICA和文化研究会イベント集合写真

2025年3月4日に、和文化研究会は、「茶室から学ぶインテリアコーディネート講座」を、初の試みとし
て開催いたしました。昨年の帝国ホテル「東光庵」での茶道体験を一歩深め、「茶室」文化をインテリアに活かす考え方や実践を深く学ぶことができました。

「茶室から学ぶインテリアコーディネート講座」
茶道家で建築家の大貫雄二郎先生を講師にお迎えし、先生の豊富なご経験に基づいた「茶室から学ぶインテリアコーディネート講座」をご講演いただきました。先生は、長年にわたり、茶道、住宅設計、デザイン研修の育成経験等に関わってこられました。ご自身もICの資格をお持ちであり、ICの視点から『茶の湯』に引き継がれる日本古来の文化を、現代の空間デザインに取り入れることへの挑戦に力強く背中を押してくださいました。

ICの資格を持つ大貫先生の説得力あるご講演の様子

今回の講座で先生がポイントとして教えてくださったのは、「茶室のインテリアは【真・行・草】で構成されている」というお話です。

「真(しん)」: 厳格で形式的な書院造りなど、格式の高いスタイル。

「行(ぎょう)」: 形式と自由さが混ざり合ったスタイル。

「草(そう)」: 粗末な素材や簡素な構成を取り入れた、最も自由で洒脱なスタイル(侘び寂び)。

先生は、茶室で使われる部材や形状にこの「真・行・草」の格付けがあり、どれが「良い」とか「悪い」やクオリティの差というものではなく、それぞれの特徴、素材、形式を知っておくことで「和のインテリア作り」に広がりや奥深さが生まれると、教えてくださいました。

これは、一般的な茶室や和室だけでなく、モダンな空間に「和」を取り入れる際の素材の選び方や設えについても、非常に実践的な考え方であり、著名な現代の空間デザインにも応用されていることを、いくつかの事例を交えて説明してくださいました。特に、昨年の和文化研究会で茶道体験を行った、村野藤吾氏がデザインされた帝国ホテル「東光庵」の事例解説を詳しくしてくださり、茶室の思想がいかに現代の空間デザインに応用されているかを興味深く学ぶことができました。

参加者からは実務に関する鋭い質問が多く出され、先生の熱意ある解説から、参加者一人ひとりが、教えていただいた概念を自身のデザインに活かそうと強く感じられたようです。特に「茶室」に関しては、様々な流派が存在し、決まりごとを堅苦しく考えがちになることについて、空間の目的に応じた自由な発想・関心を大切にすることが魅力的なデザインにつながる、という先生の言葉に皆で勇気づけられたのが印象的でした。

竹が使われた「草」の天井や建具のある「離れの茶室」の様子

「松隠亭」の特別見学会
講座の後には、会場となりました数寄屋づくりの住まいと一体化した茶室「松隠亭」を、大貫先生にご案内いただき、見学させていただきました。
「松隠亭」は、「数寄屋住宅礼讃」の著者、平野十三春先生が「日本人本来の生き方や住まい方を取り戻そう」という考えで建てられた建築です。日本古来の佇まいを感じさせる建物ながら、鉄骨造で大空間やふところのある天井をもちつつ、壁や天井の内装材は下地から伝統工法や素材を取り入れたインテリアで構成されています。
「土壁」「天然の木」「職人による伝統技術」が、建具や壁や天井に取り入れられ、見どころが多く、見学の際には、随所でため息と感嘆の声が上がりました。

数寄屋建築の粋を結集した「松隠亭」の広間。鉄骨造による大空間と、伝統的な意匠が融合した唯一無二の住空間です。

大貫先生から、「庭屋一如」(建物と庭が一体となっている)や、部屋ごとに工夫された「天井の意匠」(笹杢板の敷き目張り、漆喰塗りの円形天井、船底天井など)、「左官の技」(大津磨き、現代大津磨き)といった専門的な見どころに触れてくださったことで、なお一層、心に響きました。
平野先生の奥様から立礼式でお茶とお菓子をいただくことができ、茶の湯のおもてなしに癒されながら、和やかな交流をすることができました。参加者からは、『一度では見切れないほど奥深い空間』『これこそ至高の贅沢な住宅』と、唯一無二の空間への驚きと感動の声が止まりませんでした。

大貫先生から一つ一つのこだわりについて、説明を受ける様子

お茶とお菓子をいただきながらの和やかな交流会。ICとして追求すべき「おもてなしの心」を五感で学ぶ貴重な機会となりました。

立礼式のお茶を、平野先生の奥様からいただきました

おわりに
会場の関係で、限られた人数での実施となりましたが、東北、北陸、中部と様々な場所から足を運んで頂きました。遠方からもご参加いただいた皆様に、改めて心より感謝申し上げます。
今後も、一人ではできない体感型の研究会セミナーやイベントを企画してまいりますので、ぜひ皆様とお誘い合わせの上、ご参加ください。

都会とは思えない美しい庭園と離れの茶室

◆特別公開◆『松隠亭』スライドショー
松隠亭の隅々まで写された当日の様子を、動画でもお楽しみください。写真だけでは伝わりきらない、数寄屋建築の光と影、そして職人技の質感をぜひご覧ください。
▶︎ YouTubeスライドショーはこちら:

◆JAFICA和文化研究会について◆
私たちは、JAFICAで和文化に興味を持つメンバーと学び会うグループです。日本の文化芸術・工芸品・設え・建築等は、一人ではなかなか理解を深めることが難しい分野ですが、インテリアの仲間同士で体感、学習、交流し、活かしていこうという研究会です。ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。皆様のご参加をお待ちしております。